学びたかったことシリーズ「宗教」から旧約聖書を紐解いています。
前回「創世記」が終わりましたので今回からは「出エジプト記」について書いていきます。
出エジプト記は、エジプトで奴隷として使われたイスラエル民の脱出を描き、モーセが主人公となります。
モーセ
ヨセフがエジプトで信頼を得て宰相にまで昇りつめた時代は、ヨセフの家族もエジプトから歓迎され平和に暮らしていました。しかしヨセフが110歳で亡くなって、王が何代も変わり400年経つ頃には、ヨセフのことも知らず、なぜイスラエル人がエジプトに住んでいるのかも知らない王が国を治めるようになりました。
イスラエル人は多産で体が丈夫だったため、エジプト人の数を上回る程まで増えました。その事実に脅威を感じたエジプト人は、イスラエル人を奴隷として使い弱体化させようとしたのです。
ところがイスラエル人は「苦しめれば苦しめるほどますます広がった」と言われ、エジプト人はさらに恐れて労働を過酷なものにしていきました。また、王はイスラエル人が子供を産むとき、男の子が生まれたら殺すようにと助産師に命令していたのです。神に対する罪だと拒否した助産師にも、殺さずともナイル川に投げ込むようにと殺人の命令を徹底しました。イスラエル人をどれほど脅威に感じていたのかよくわかります。
そんな中レビ族(ヤコブとレアの子供レビの直系)の女が1人の男の子を生みました。母はとても息子を殺すことができず、3か月秘かに育てました。いよいよ隠しきれなくなると息子をかごに入れてナイル川の岸辺に浮かべました。赤ん坊の姉が、かごに入れられた赤ん坊を離れたところから見ていると、エジプト王女が侍女を連れて水浴びにやってきました。かごの中で泣いている赤ん坊を見つけ「イスラエルの女が殺しきれずに捨てたのだろう」と察します。遠くから見ていた姉は王女に近づき「乳母を連れてきましょうか?」と申し出て実の母を連れてくるのです。
モーセが拾われる場面です。
王女に乳母として育てることを託された実の母は、息子が乳離れするまで育てました。息子が大きくなり約束通り王女のもとに連れて行くと、王女は「モーセ」と名付け養子にしました。「モーセ」は引き出すという意味で王女が水の中から引き出したという由来です。
モーセは自分がイスラエル人であることを知っていました。自分と同じ民族が奴隷とされる国で、自分だけが王族の一員として育てられたことを複雑に感じていました。モーセは王族で高い教育を受けていました。
エジプト脱出
ある時エジプト人がイスラエル人を殺しているところを見てしまったモーセは、誰もいないのを見計らってそのエジプト人を殺害し遺体を隠します。しかしエジプトのファラオ(パロ)王にばれてしまい殺されそうになったモーセはミディアン地方へ逃亡します。そこで司祭の娘チッポラと結婚し男の子を授かり40年ほどのんびり暮らしました。
ミディアンで暮らしているある日「エジプトからイスラエル民を導き出せ」と神からのお告げがありました。全世界を祝福するために選んだイスラエル民がエジプトで奴隷になっていてはいけないので、モーセを選び使ったのです。
口下手なモーセは命令に乗り気じゃありませんでした。そこで口達者な兄のアロンを連れて行きました。ファラオ王のもとに訪れイスラエル人を手放すように言いました。しかし大事な労働力を手放すまいとファラオ王は強情に拒み続けました。さすがにしびれを切らした神は10災を起こしエジプトをとことん苦しめるのです。神に逆らうと怖い!!
10災の内容
①ナイル川の水が血に変わり、飲めなくなる。
②カエルが大発生し、その大量の死骸が悪臭を放つ。
③ブヨが大発生し、人や獣にたかる。
④アブの大群が人を襲う。
⑤エジプト人の家畜だけが疫病で死ぬ。
⑥エジプト人と彼らの家畜に腫れものができる。
⑦激しいひょうが降り、人、家畜、作物が被害を受ける。
⑧いなごの大群が襲来し、ひょうを免れた草木も木の実もことごとく食い尽くす。
⑨エジプト全土が3日間、闇に覆われる。
⑩エジプト人とその家畜の長子がみな死ぬ。
虫を使いがちですね。もっとドカーンと一回で大きなダメージを喰らう災害ではなくて地味に嫌なやつ10個。神は考えたのでしょう。10個災い起こすとして、1番最後は全員死ぬでしょ、その前日は闇に包まれた方が雰囲気出るよね、ナイル川が血に変わるとか派手で良くない?オープニングインパクトみたいな感じで、あとはカエルとかアブとかブヨになんかさせとくか、委託料安いし、と。そもそも10個にしたからこんな地味なものが考えついちゃうんだと思うので5個とかにすれば良かったのに。10個だとこのレベルの災いが混じってしまうのは、まぁわかる。そんなにアイディア出ないよね。
この10個目の災いの前にイスラエル人は家の玄関に羊の血を塗るように命令されます。印がある家は災いが過ぎ越されるのです。今でも毎年イスラエルでは1週間の「過越の祭り」が行われています。
10個目の災いで長男を失ったファラオ王はついにイスラエル人を追い出します。この時壮年の男子で60万人いたそうです。ヨセフがエジプトにイスラエル人を招いてから430年が経っていました。ヨセフはいつかエジプト去ることを見越していました。エジプトから出るときは自分の遺骨を連れて行って欲しいと言っていたのです。モーセはヨセフの遺骨を持って脱出しました。
長い長いイスラエルの奴隷時代はあまり乗り気でないモーセによって救われました。
これまで出てきた登場人物の中でも、特に口下手で内気なモーセ。神はさまざまな性格の人を選んでいたことが分かります。
さて、次回はエジプトを出てから約束の地カナンへ行くまでの話です。駄々っ子イスラエル民を連れたモーセの限界の旅が始まります。
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