🐘たびっこ動物🐅

毎月プチ旅行

サルの逆襲が来た

サルの逆襲が来た。

分厚い鉛色の雲が空を覆う冬の午後5時、もう薄暗い渋谷のスクランブル交差点で、小さな車が猛スピードで歩行者に追突、次々に人をなぎ飛ばし暴走した。電柱にぶつかって止まった車の運転席で、血眼をギョロつかせているのはサルだ。

関東を取り囲む山から都心に向かって降りてきた無数のサルたち、いや、サルというより猿人だ。人間と同じぐらいの背丈になり、機械を操るようになったサル、意志を持ち言語を操るサル。肌が少し浅黒いぐらいで注視しなければ人間と区別ができない。

サルが人の髪を引っ張り顔を殴る、甲高い声を上げながらカバンを奪い取り、振り回して投げつける。ガラスを割って建物に入り、滅茶苦茶に荒らして食料を撒き散らす。平和ボケした人間がなす術もなくサルにやられている。もう誰が味方で誰が敵なのかわからない。わずか1時間足らずで渋谷はめちゃくちゃになった。

サルの逆襲は、度々起こった。池袋、新宿、原宿、六本木、上野。大量の死傷者と行方不明者が出た。気づいたらスラム化した都内に残っている人は少なくなっていた。

地方へ疎開するため集団で山道を歩いている時、大型トラックが前の列に突っ込み横転した。体を挟まれた人たちの助けてくれ、連れて逃げてくれ、と助けを求める声から目を背け、サルが出てくる前に逃げようと思った。今なら惨事にみんな釘付けだと、トンネル横の山に入る階段を駆け上がった。

山道を奥へ走っていると、向こうから誰かが覚束ない足取りで歩いてきた。背中が丸まり力なく腕がぶら下がっている。サルだ、と思った。護身用に持っていたバットで何度もサルを打ちのめした。念には念を、最後の3回は倒れて気を失った頭を狙った。

僕はそのサルの身を裂いて肉を食べた。中国ではサルの脳みそを食べるらしいから、なんてことはないはずだ。これからはサルの肉を食べれるようにならないと、生きてはいけない。

骨が砕け原型を留めなくなったサルの顔は赤黒くなっていた。サルの血も人間と同じ赤なんだなと思った。人間に見えるこのサルは半袖のワイシャツを着ていた。胸に刺繍の入ったシャツは僕が父の日にプレゼントしたものだった。

 

世界で一番美しいサルの図鑑

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: エクスナレッジ
  • 発売日: 2017/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)